まわれカロン

ぽにとも!

競馬が心底嫌いな塚田担が「サクラパパオー」を観たよ


(※かなりのネタバレを含みます)



5月14日、有楽町のカフェで時間を潰しつつバッグの中の「サクラパパオー」のチケットについて、さてどうしたものか、と考えていた。


前日の夜公演がわたしにとってはじめての「サクラパパオー」だった。
その公演の感想を一言で言うと、「わたしには合わない」作品だったな、と。

とはいえ、いくら題材が嫌いでも楽しみにしていたのは本心だった。だって外部舞台で、しかも自担の初座長公演とか、そんなの楽しみにしてないわけがない。穿った見方をしたくなかったから、観るまで競馬が嫌いだなんてほとんど口に出さなかった。そんなことをしてしまうぐらい楽しみだった。
わたしみたいな競馬に親でも殺されたのかってぐらい、競馬が心底嫌いな人間の偏見めいた感情を吹っ飛ばしてくれたらいいなあ、なんて思っていた。全部杞憂にしてほしかった。


けど、その日は杞憂にはならなかった。
とにかく登場人物は基本的にほとんど競馬が好きか競馬やギャンブルに対して否定的でない人ばかりで(競馬場が舞台だし当たり前っちゃ当たり前だけど)、誰の気持ちも理解出来ないのでめちゃくちゃ置いてけぼりを食らった気分になった。
競馬が嫌いなわたしにとって、あの中で味方だと思えるのは今日子ちゃんだけだったんだけど(途中賭けてみる場面もあるけど、基本は田原くんたちに怒ったりというスタンスを貫いていたので)、その今日子ちゃんも最終的には田原くんを許してついていくことを決めてしまう。

話は面白かった、と思う。笑えるところは笑えるし、泣けるところは泣ける。特にヘレンと幸子さんのとあるシーンでは少しほろりとした。
ただ、わたしには合わなかったなあ、と思っていた。もう少し客観的に観られるタイプならよかったのかもしれないけど、どうしても感情移入しようとしてしまって、その結果こんなもやもやが残ってしまった。


注文した飲み物をすすりながら、今から譲りに出してもなあとか、でも行かずに空席増やすのもなあとか、ていうかなんでわたしは自担の晴れ舞台をこんなに楽しめないんだろうとか、いろんなことをぐるぐる考えていた。
そうこうしていると時間も迫ってきて、また観たら何か変わるかもしれないしチケットはあるんだしもうヤケだヤケ!と腹を括って劇場へと向かった。



そんな気持ちで臨んだからか、観るまでのもやもやとか葛藤はなんだったんだろうってぐらい、東京楽はストンと自分の中に落ちてきた。


演出の中屋敷さんがパンフレットで「演出家としては今作を、コメディの要素を基盤とした壮大な「ファンタジー」と読んだ。」と言っていたけど、まさにその通りだ。「サクラパパオー」は、一時の夢なんだと思う。前回観た時、わたしは魔法にかからなかった。夢を見きれていなかった。


「サクラパパオー」はファンタジーである、ということを踏まえて、塚田くん演じる田原俊夫の話をする。

田原くんは本当にクズだ。塚田くんがやっているからそんなクズっぷりもちょっとマイルドになるとか、そんなことは断じてない。その場に婚約者がいるにも関わらず普通に別の女のケツ追っかけるし、大事なことより競馬優先。クズすぎ。
まあわたしは競馬が嫌いだからこんなにボロクソ言ってるけど、競馬が嫌いじゃなかったら多分憎めないって感想を持ってただろうな、とは思った。


田原くんが憎めないクズだとして、それだけなら別に塚田くんじゃなくてももっとそんな役が上手い役者さんがごまんといると思う。
ただ、今回の「サクラパパオー」はファンタジーだ。観ている人を「リアルではないところ」に連れて行くための要素として、メリーゴーランドやゴール板をモチーフにしたファンタジックなセットや登場人物それぞれに割り当てられたカラー*1を意識したカラフルな衣装などの視覚的なもの、サクラパパオーという馬の存在、そしてそれらと並んで塚田くんが田原役にキャスティングされたことがあると思う。

塚田くんは東京楽のカーテンコールで「数あるアイドル、俳優の中から僕を選んでくださって」(ニュアンス)と言っていたけど、リアルではないところに連れて行ってくれる/夢を見させてくれる/魔法をかけてくれるアイドルの部分と、田原くんのように、とまではいかないけど、そこそこ奔放に生きている部分を併せ持つ塚田くんが選ばれたのは、必然めいた何かだったんじゃないかなあとさえ思う。


中盤を過ぎた辺りからタイトルにもなっているサクラパパオーという馬が登場人物に深く関係する人間なんじゃないか、ということで話が進み始める。
このサクラパパオーにまつわる話は個人的にはかなりグッと来たし、あの時本当に舞台の上にはサクラパパオーがいたし、サクラパパオーはあの人なんだと思った。

でも観終わってしばらくすると、いや馬が人間ってそんなことあるわけ…という感情が生まれてきた。もしかしたら観た人の中にはそんなこと思うなんて野暮だ、と思う人もいるかもしれないし、それはそれでごもっともだと思う。
だけど、わたしはこの現実的な感情を持ち始めた瞬間の感覚、サクラパパオーがあの人で、サクラパパオーが芝を駆けていたのは夢だったんじゃないかと思い始めた時の感覚こそが、この舞台の醍醐味なんじゃないかなあと感じた。少なくともわたしはこの舞台を観てからそう思い始めるまでの間、夢を見ていた。


競馬場、という場所は来た人が夢を見、その夢に少しの間想いを馳せることが出来る場所だ。競走馬はたくさんの人の夢を背負って駆ける。
けど、競馬が賭け事であるという性質上、どうしてもマイナスなイメージを持たれがちだ。

「サクラパパオー」は、競馬における「夢」の部分を抽出し、上手くファンタジーに昇華させた作品だなあと。
観たからって競馬に対する気持ちは変わらなくて、今もめちゃくちゃ嫌いだけど、わたしは「サクラパパオー」では夢を見ることが出来た。良い作品でした。


東京楽のカーテンコールで他のキャストのみなさんが「塚田僚一です!」と言いながらY字バランスをしてくれたりしていて、塚田くんめちゃくちゃ愛されてるなあと思ったし、真ん中に立って途中しどろもどろになりながらもひとつひとつ言葉を選んで話す塚田くんの姿は、なんだかとても誇らしく見えた。


塚田くんの初座長作品が「サクラパパオー」で本当に良かった。自担がいつも素敵な縁に恵まれててオタクも幸せ!



この間発表されたばかりだと思っていたのに、もう残すところ大阪の3公演だけらしい。早いな〜。
残り3公演、無事に駆け抜けられますように!

*1:チラシやポスターにある出走表を模したキャスト一覧にて確認出来る